逆流性食道炎
逆流性食道炎とは?
胃液が食道に逆流してくる病気を胃食道逆流症といい、胃液の逆流によって食道に炎症が生じたものを逆流性食道炎といいます。しつこい胸焼け症状が特徴です
症状は?
最も多い症状は胸骨の後ろが焼けるように熱くなる、俗に言う“胸焼け”です。
この症状が胃酸を押さえる薬で治まるようなら、ほぼ間違いなく逆流性食道炎です。
その他、胸の痛み、せき、口の中の苦味、酸っぱくなる、下を向くと起こる吐き気、声のかすれ、喘息症状などもこの病気の可能性があります。
食道の炎症がひどくなると、食べたものがつかえる、出血などの症状を出してきます。
診断について
胸やけなどの典型的な症状があり、胃酸を抑える薬で症状が改善すれば、逆流性食道炎である可能性が非常に高いです。
診断が難しい場合や、より正確な評価が必要な場合は、以下の検査を行います。
- 24時間pHモニタリング
食道内に留置した小さなプローブで、24時間にわたる胃酸の逆流回数や時間を測定します。これは逆流性食道炎のゴールドスタンダードとされる検査です。 - 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
食道の炎症の程度や食道裂孔ヘルニアの有無を直接確認します。また、食べ物がつかえる、出血といった症状がある場合は、食道がんなどの重篤な病気がないかを除外するために必須の検査です。 - その他
胸の痛みや咳、喘息のような症状は、心臓病や呼吸器系の病気と間違われることがあります。そのため、症状によってはそれぞれの専門医による診察や検査も必要になります。
治療法
逆流性食道炎の治療の基本は、食道への胃酸の逆流を抑えることです。治療には薬物療法と手術療法があります。
薬物療法
胃酸の分泌を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)や、より新しいカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が主流です。これらの薬剤は高い効果が期待できます。
しかし、多くの場合は薬を中断すると症状が再発するため、長期にわたる服用が必要になることが多いです。
手術療法
胃と食道の間にある噴門(逆流防止弁)の機能を外科的に修復し、根本的な逆流を防ぎます。薬物療法に比べて、より根本的な治療法と言えます。
手術の適用
以下のような場合、手術を検討する価値があります。
- 薬の長期服用を避けたい、または継続が困難な場合
薬は有効だが、費用や副作用などの理由で長期的な服用を望まない、またはできない場合。 - 重度の食道炎、合併症がある場合
薬で改善しない重度の食道炎、狭窄や出血といった合併症がある場合。 - バレット食道が存在する場合
胃酸の刺激により食道粘膜が変質し、食道がんのリスクが高まるバレット食道がある場合。 - 薬物療法で改善しない典型的な逆流症状
薬を飲んでも、胸やけなどの典型的な症状が十分に改善しない場合。
どのような手術をするか?
現在主流となっているのは、腹腔鏡下噴門形成術です。
- ヘルニア嚢の還納
横隔膜を越えて胸腔内へ飛び出した胃(ヘルニア)を腹腔内に引き戻します。 - 横隔膜脚の縫縮
食道が通る横隔膜の穴(食道裂孔)を縫い縮めて、胃が再び胸腔へ飛び出さないようにします。 - 噴門形成
胃の上部(胃底部)を食道の周囲に巻き付け、逆流を物理的に防ぐ逆流防止弁を形成します。
この手術は、腹部に数か所の小さな穴を開ける腹腔鏡を用いて行われるため、傷が小さく、術後の痛みが少ないのが特徴です。拡大された術野で精密な操作が可能であり、開腹手術に比べて入院期間も短く、早期の社会復帰が期待できます。
長期的には、手術による一時的な費用はかかりますが、生涯にわたる薬代と比較すると、手術をした方がトータルの医療費が安くなるという報告もあります。
入院期間
手術後の経過にもよりますが、一般的には術後2日から5日で退院が可能です。
〈実際の手術〉食道裂孔ヘルニア手術 噴門形成術
この患者様は10年近くにわたり胸焼け症状に悩まされてきました。
胃酸を押さえる薬を飲むと症状はおさまっていたのですが、中断すると決まって同じ症状が出現し、その程度は徐々に強くなってきました。
仕事も忙しくなかなか病院にも行けずにいると、とうとう夜中に胸焼けと苦いものがこみ上げてきて眼を覚ますこともしばしば経験するようになりました。。
ある病院の先生からは「この病気は一生治らないから、永久的に薬を飲み続けるしかない」といわれたそうです。
そして「手術で何とか治らないか」と私のところにいらっしゃいました。
検査をすると、胃と食道の境目がゆるくて胃の一部が食道側に飛び出し(図1)、(図2)。一度胃に入ったバリウムが食道に戻ってきます(図3)。
検査中もバリウムが食道内へと逆流してきます。
胃の中から、胃の入り口を見上げた写真です。本当は締まってなくてはいけない胸とお腹の境い目が大きく開いています。
胃カメラ検査でも胃と食道のつなぎ目に近い食道粘膜は、ほぼ全周にわたって赤くただれ、粘膜が剥がれ落ち、潰瘍を作っていました(右図)。この潰瘍からは悪性の細胞は見つからなかったので、胃酸が逆流してできた潰瘍と考えられます。
この患者様には腹腔鏡下噴門形成術(Nissen法)を行いました。
Nissen法とは食道に近い胃の一部を、マフラーのように食道の周りに360°ぐるりと巻きつける方法です。
手術翌日には歩行し、水分も開始しました。
術後2日目までは飲み込んだものがやや使える感じがありましたが、その後は順調に食事も進み、6日目に退院(現在は術後2日目に退院)しました。
これまで何年にもわたり患者様を苦しみ続けさせたあの“胸焼け”が何の薬も必要なく消失したことを大変喜んでいらっしゃいました。
食道と胃のつなぎ目はしっかりと締まっています。
もちろん、逆流もありません。
しっかりとした“襟巻き”が出来上がっています。
ひどかった食道炎も改善しています。
