胃全摘術
内視鏡外科技術認定医を中心に腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。
病変部の広がりによっては胃を全摘出する必要があります。
このような場合でも腹腔鏡下に手術を行うことが可能です。難易度の高い手術で、
ある程度の技術がないと行うことが難しい手術です。
さて、この方は70代の患者様です。
20日間ほど胃もたれが続き、市販薬でも改善しないために胃カメラ検査を受けました。
すると、胃に入ってすぐの部分から広い範囲でややくぼんだで表面が荒れた部分を発見しました。ここからガン細胞が見つかりました。
根の深さは浅そうでしたが、範囲は胃の入り口から胃の中間部分まであり、場合によっては更に広い範囲にまで広がっている可能性もありました。
内視鏡的な切除や噴門側切除など、いろいろと治療法を検討し、最終的に腹腔鏡下胃全摘出術を行うことにしました。
左のような位置の小さなきずから手術を行います。
きずの位置は手術する病院、医者によってさまざまですが、当院では左のようなきずで行います。
みぞおちのきずは、切った胃を取り出したり、腸と腸をつないだりする時に4cmほどに広げます。
- ● 12mm カメラを入れるきず
- ● 5mm 主に術者が使う器具を入れるきず
- ● 12mm 主に術者が使う器具を入れるきず
- ● 5mm 主に助手の使う器具を入れます
- ━ 胃の取り出し、胃と腸・腸と腸の縫い合わせの時に使います
実際の腹腔鏡による胃切除術の一部をお見せします。胃を切るだけでなく、胃に行く血管の周りについたリンパ節をしっかりとるために、血管を根元で処理する(切る)事が重要です。
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まず、胃に付着する“エプロン”のような脂肪の膜を切り開き、胃や胃に行く血管を切る準備をします。
この時にこのエプロンに入り込んでくる血管も切り離します。胃を全部取る時には食道から十二指腸に至るまでの脂肪のエプロンを切り開いて行きます。
脂肪の“エプロン”を切り開き・・・
脾臓の血管から胃に向かう血管をできるだけ根元で切りながら・・・
食道にまで達します
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さらに十二指腸にも向かって“エプロン”を切り開きます。胃の出口に、この脂肪のエプロンを栄養する血管があります。これを根元で切り離します。
十二指腸に向かって脂肪のエプロンを切り開いていきます
血管の周りの脂肪には転移の可能性のあるリンパ節が隠れている事があります。血管を根っこから切り離すことが大切です
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胃の周りにある血管に付着する脂肪を取りながら胃に入る血管を切り離して行きます。こうするとこでがん細胞のいる可能性のあるリンパを取り除くことができます。これを郭清と言い、がんの手術には非常に重要な操作です。
肝臓に行く血管の途中から、胃に向かう血管が(右胃動脈といいます)出てきます。
これも肝臓に向かう血管との分かれ道の部分で切り離します。
右胃があれば左胃動脈もあります。この血管は胃に入り込む最大の血管です。この血管の周りにも脂肪に包まれたリンパ節がありますから、しっかりと根元で切り離します。
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この段階で十二指腸を切り離します。
ホチキス付カッターで一気に切り離します。
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さあ、これで郭清(リンパ節の切除)と胃の血管の処理が終わりました。後はいよいよ胃の切除に移ります。
右胃から左胃動脈に至まで、肝臓に向かう太い動脈(総肝動脈)に沿って血管の周りの脂肪が取り除かれています。
さらには脾臓に向かう血管の途中まで脂肪を取り除き、がん細胞が残ることがないように手術を行います。 - 6
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血管の処理が終わるといよいよ胃を全摘出します。そして、持ち上げた小腸と食道をつなぎ合わせます。
つなぎ合わせる手技もお腹の中で行います。
体の深い場所での操作ですが、カメラで拡大されているため周りを確認しながら安全に行うことができます。
つないだり、切り離しの準備のために食道の周りを十分に露出しておきます。
ホチキスを入れるための穴を食道に開けます。同様の穴を小腸にも開けます。これで小腸と食道をつなぐ準備ができました。
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右のような手順で小腸と食道をつなぎ合わせます。
小腸にホチキスを入れ・・・
食道にもホチキスを入れ・・・
ホチキスを閉めてハンドルを操作すると・・・
食道と小腸が縫い付けられると同時に、間が切り開かれて、食道と小腸が筒状につながります。
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ここで食道を切り離し、胃が全摘されます。
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ホチキスを入れた穴はおなかの中で縫い合わせます。
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小腸と小腸も縫い合わせて完成です。
①食道-小腸のつなぎ目
②小腸-小腸のつなぎ目
術後3週間目のお腹のきずはこんな感じです。胃を取り出したきず口は約4cmです。
開腹手術ではこのようなきずが必要です。
この手術の術後入院期間は6日間です。
